「鹿が増えて、畑が荒らされている」「クマが人里まで下りてきた」。そんなニュースを目にする機会が、ここ数年でぐっと増えました。けれど都市で暮らしていると、山でいま何が起きているのかを肌で感じることはほとんどありません。
今回はSTAY JAPANのなかから、狩猟体験ができる宿7選をご紹介します。罠猟師やマタギがホストを務める農家民宿から、猟友会の活動に参加できる一棟貸しまで。山の「今」を、現場の人から直接聞きに行く旅をお届けします。

なぜいま猟師さんに会いに行くのか|狩猟体験で知る里山の今
増えすぎたシカやイノシシによる被害、人里近くに姿を見せるクマ——。こうした山と人里の変化を、ニュースやSNSで目にする機会が増えました。しかし、画面越しに見る情報と、現場で起きているリアルには大きな隔たりがあります。
山の異変や自然の循環を、一番近くで見つめているのが「猟師」です。
獣道を見極め、罠を仕掛け、獲物をさばき、命を食卓へ届ける。現代の暮らしでは触れることのない「真剣な命のやり取り」や、五感を研ぎ澄ます緊張感、そして本当の意味での「食への感謝」——。本物の現場に身を置く体験は、私たちの感情を強く揺さぶります。
山に動物が増えると何が起きるのか。そこに暮らす人々は何を想い、何を守ろうとしているのか。
高齢化により猟師の担い手が減る今、その声を直接聞ける機会は多くありません。だからこそ「狩猟体験ができる宿」で共に食卓を囲み、山へ入る時間は、ニュースを鵜呑みにするだけでは得られない人生の大きな学びになります。
獣害の現実、担い手不足、捕獲された命のゆくえ。一晩の滞在から見えてくる「日本の山里の今」を、あなたも肌で感じてみませんか。
大人の狩猟体験を楽しむ宿の選び方|猟期・体験の深さ・参加条件をチェック
1. 猟期に合わせて日程を組む
狩猟には法律で定められた猟期があり、一般的には冬が中心です。今回ご紹介する宿でも、カモ猟は11月15日〜2月15日、猟友会の活動に参加する体験は11月〜3月に限られます。一方で、マタギの話を聞いたり、ジビエ料理を味わったりするのは通年で楽しめます。
2. どこまで関わるかで選ぶ
猟師と山に入る、罠の見回りに同行する、解体を見学する、話を聞く。宿によって体験の深さはさまざまです。はじめての方は、まず猟師の話を聞くところから始めるのも一案です。
3. 年齢や参加条件を確認する
大人のみ参加できる体験、小学生以上が対象の体験など、条件は宿ごとに異なります。家族で訪れる場合は、予約前に確認しておくと安心です。
※ 予約時のワンポイント注意点
- 獲物が獲れるとは限りません。自然が相手の体験のため、獲物がかからない日もあります。
- 旅行者は猟銃を扱えません。狩猟免許を持たない方は、同行・見学・補助が中心になります。
- 解体は命と向き合う時間です。血を目にする場面もあるため、お子さま連れの場合は事前に宿へ相談しておきましょう。
- 体験は基本的に要予約です。ただし、捕獲があったときだけ見学できる体験など、予約を受け付けていないものもあります。
1. 猟師と山へ|狩猟体験に参加できる宿
【京都府 舞鶴市】農家民宿 拾得|罠猟師と山を歩き、獲物の解体・精肉まで体験



舞鶴の西方寺(さいほうじ)集落で、狩猟採集と田畑の暮らしを営む農家民宿です。ホストの清水祐輔さんは、獣肉処理施設「寒山」を営む罠猟師。狩猟から解体・加工までを自ら手がけ、「山の肉屋」としても知られています。
体験の目玉は、清水さんと罠を見回る罠猟体験と、獲れた肉を切り分ける精肉体験です。猟師の目線で山を歩くと、いつもの景色がまったく違って見えてきます。夜は竈で炊いたご飯に、野草やジビエの料理を合わせて。命をいただく実感とともに、滋味深い里山の味わいが広がります。
▶︎ 施設形態:ホームステイ型・最大5名
▶︎ 狩猟体験:罠猟体験、精肉体験、鶏絞め(オプション・要予約)
▶︎ そのほかの体験:川エビ獲り、ソーセージ作り、保存食作り、薪割り、かまど炊飯など
▶︎ 食事:竈炊きのご飯と、野草・ジビエ・季節の野菜を使った料理
▶︎ アクセス:JR西舞鶴駅・京都丹後鉄道 四所駅から送迎あり(要相談)
【新潟県 三島郡出雲崎町】農家民宿さとやま|元猟師のホストと猟友会に同行する、冬のカモ猟



三代続く米農家が営む農家民宿です。元猟師のホスト・森山さんの案内で、地元猟友会の猟師と一緒にカモ猟へ出かけられます。
前夜の夕食は、猟師2〜3名も加わる「作戦会議」を兼ねています。翌朝7時に出発し、9時半ごろまで猟に同行。猟銃を持つことはできませんが、カモを見つけるまでのドキドキと緊張感、猟銃の迫力、猟師たちのチームプレーを間近で体感できます。さらに、カモをいただくときには命のありがたみを実感するはずです。
猟期以外も、新潟コシヒカリや地魚を使った手料理でもてなしてくれます。錦鯉が泳ぐ日本庭園を眺めながら、のんびり過ごすのも良いでしょう。
▶︎ 施設形態:個室・最大7名。6名以上で貸切可
▶︎ 狩猟体験:カモ猟体験(11月15日〜2月15日の猟期限定・大人のみ・車で来訪の方のみ)
▶︎ 食事:1泊2食付き。新潟コシヒカリ、自家栽培の野菜、地魚を使った手料理
▶︎ アクセス:北陸自動車道 西山ICから車で約20分。JR長岡駅からバスで出雲崎駅まで約55分、駅から送迎で約10分
【宮崎県 西都市】東米良銀鏡のお宿 一の仁|神楽と狩猟の里・銀鏡で、猟友会の活動を体験



国指定重要無形民俗文化財「銀鏡神楽」で知られる、銀鏡(しろみ)地区。神楽や狩猟の文化が今も色濃く残る山里に建つ、1棟1組限定の一軒家です。
猟期には、地元猟友会の活動日にあわせた狩猟体験に参加できます。山の暮らしを支えてきた狩猟の現場に、旅人として触れられる貴重な機会です。また、滝行や林業体験、川釣り、ゆずこしょう作りなど、山里ならではの体験も豊富にそろいます。
宿には、牛舎を改装した露天風呂と、畳1枚分ほどの囲炉裏がある納屋も。山あいに広がる星空を見ながらの露天風呂もお楽しみいただけます。
▶︎ 施設形態:一軒家貸切・最大6名
▶︎ 狩猟体験:2000円/人(2名様より)、時期:11月〜3月の猟期・猟友会活動日
▶︎ そのほかの体験:滝行、薪割り、林業、川遊び・川釣り、銀鏡神社観光ガイドなど(すべて小学生以上)
▶︎ 食事:素泊まりが基本。「むすび家銀鏡食堂」の夕食・朝食を追加可(宿泊7日前までにオプションより申込)。自炊も可
▶︎ アクセス:宮崎駅から車で約1時間30分。西都バスセンターからコミュニティバスで約1時間
2. 命をいただく|解体見学・ジビエ体験ができる宿
【長野県 下伊那郡豊丘村】農家民宿ひがし|猟師のオーナーが営む、ジビエセンター併設の築100年古民家



南信州の山奥に建つ、築100年を超える古民家の一棟貸しです。オーナーの壬生紘彰さんは、2015年に狩猟免許を取得。2020年には、敷地内に食肉処理施設「伊那谷ジビエセンター」を立ち上げました。
きっかけは、捕獲された鹿の多くが廃棄されている現状でした。当初は村内の罠にかかった鹿を引き取って解体していましたが、その頭数は次第に増えていったといいます(参考:ジビエト「農家民宿ひがし」)。夕食の囲炉裏端には、近所の山で獲れた鹿肉の料理が並びます。
さらに、宿泊中にたまたま捕獲があった場合のみ、シカの解体を見学できます。計画的に獲れるものではないため予約はできませんが、動物から命をいただく有難みを実感できる貴重な機会です。
▶︎ 施設形態:一軒家貸切・最大10名
▶︎ シカの解体見学:捕獲時のみ・無料。たまたまご宿泊時に捕獲があった場合のみ見学可能(計画的に獲れるものではないため、予約不可)
▶︎ そのほかの体験:キノコ狩り、渓流釣り、ワラビ狩り、竹筒ご飯作り、川魚の囲炉裏焼きなど
▶︎ 食事:1泊2食付き。囲炉裏を囲んで味わう鹿肉料理と川魚の囲炉裏焼き
▶︎ アクセス:中央自動車道 松川IC・飯田ICから車で約30分。JR飯田線 市田駅から車で約12分(高速バス・電車利用時は最寄り駅から送迎あり)
【宮崎県 東臼杵郡椎葉村】綾野ファーム|日本三大秘境・椎葉村で、鳥の解体から命の尊さを学ぶ



面積の約96%を森林が占める、日本三大秘境・椎葉村。隣家まで500メートル以上離れた山の中にたたずむ農家民宿です。犬や猫、牛、ヤギ、ポニーなど、たくさんの動物と暮らしています。
「命の尊さを学ぶ」と銘打った鳥の解体体験では、普段何気なく食べている鳥肉を、自分の手で捌きます。夕食にはシカやイノシシのジビエ、椎葉牛、ヤマメなどの川魚が並びます。椎葉は、犬を使った猪・鹿猟が今も盛んな土地。山の恵みとともに生きる暮らしを、食卓から感じてみてはいかがでしょうか。
▶︎ 施設形態:ホームステイ型・最大7名
▶︎ 解体体験:鳥の解体体験(体験料別途・予約時に要問い合わせ)
▶︎ そのほかの体験:ポニーの乗馬、カブトムシ・クワガタ狩り(夏限定)、椎茸狩り、野菜の収穫など
▶︎ 食事:1泊2食付き(一部共同調理)。ジビエ(鹿・猪)、椎葉牛、川魚、自家製野菜
▶︎ アクセス:熊本空港から車で約150分、熊本駅から車で約100分。椎葉村役場から送迎あり(到着時に電話)
3. マタギに聞く|マタギ体験で知る、クマと生きてきた山の文化
【秋田県 北秋田市】了月舎農園|マタギの里・阿仁で、現役マタギから山と動物の話を聞く



「マタギの里」として知られる秋田県の阿仁(あに)。地元の人でもなかなか来ないという山奥に、築120年の古民家を自らの手で修繕した、1日1組限定の農家民宿があります。
ホストの木村望さんは、マタギ文化に憧れて阿仁へ移住し、今はマタギとして活動しながら農園を営んでいます。オプションの「マタギのお話」では、動物や狩猟にまつわる現役マタギならではの話をじっくり聞けます。クマとともに生きてきた山の知恵は、いま各地で起きている変化を考えるヒントにもなるはずです。
昼は湖でSUPやカヤック、夜は星空観察も楽しめます。快適さよりも、山の暮らしそのものを味わいたい方に訪れてほしい宿です。
▶︎ 施設形態:古民家(1日1組限定)・最大4名
▶︎ マタギ体験:マタギのお話、里山歩き(オプション)
▶︎ そのほかの体験:カヤック・SUP、テントサウナ、星空観察
▶︎ 食事:2食付き・夕食のみ・朝食のみをオプションで追加可
▶︎ アクセス:秋田内陸縦貫鉄道 小渕駅から車で約10分
【青森県 西津軽郡鰺ヶ沢町】くまげらの家|白神山地の木造校舎で、マタギの話と白神産のクマ鍋を



2003年まで使われていた鰺ヶ沢町立一ツ森小学校の木造校舎を活かした宿です。世界遺産・白神山地のふもとにあり、教室では白神山地の歴史や植生、マタギ(猟師)の話を聞けます。
特別メニューの白神産「クマ鍋」は、事前申込制の一品。山とともに暮らしてきた人々の食文化に、舌で触れられます。また、ブナ林を歩く白神遊山道ガイドや、津軽の歴史をたどる古道トレッキングも用意されています。校長宿舎を改装した一棟貸しのゲストハウスもあり、グループでの滞在にも向いています。
▶︎ 施設形態:ホームステイ型(本校舎の大部屋)・最大8名/一棟貸しのゲストハウスは最大5名
▶︎ マタギ体験:白神山地の歴史・植生・マタギの話
▶︎ そのほかの体験:白神遊山道ガイド、古道トレッキングガイド(金〜日のみ)、クロモジのアロマトリートメント
▶︎ 食事:素泊まりが基本。農家レストラン「しらかみ」の郷土料理を追加可。クマ鍋は時価・事前申込(季節やタイミングにより提供できない場合あり)
▶︎ アクセス:JR五能線 鰺ヶ沢駅から車で約30分(送迎あり)。青森空港から車で約70分
まとめ|狩猟体験ができる宿で、猟師さんに会いに行ってみませんか?
今回は、狩猟体験ができる宿7選をご紹介しました。罠を見回る朝の山、解体の場に流れる静かな時間、マタギが語る動物の話。どれも、画面越しでは知ることのできない山の姿です。
猟期が始まる11月に向けて、今から計画を立てるのにちょうどいい時期です。まずは気になる宿の空室を確認し、体験の実施日を問い合わせてみてはいかがでしょうか。
海の現場にも興味がある方は、漁師体験ができる宿6選|漁師に学ぶ海の恵みとグルメの旅もどうぞ。カモ猟のほかにも珍しい体験を探したい方には、農泊 珍しい体験おすすめ4選|カモ猟・語り部・乗馬など、ここでしかできない宿もおすすめです。


